正面から見た出入り口の感じだと、小屋のような作りに見えたが、奥に広々とした造りになっているようだ。
「ブライダルの下見でよろしかったでしょうか?」
「そうですね、プランとかあったら見たいんですけど」
「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」
瑠衣斗が受け答えしているのを聞きながら、キョロキョロと周りを見渡した。
すごいなあ…。夜はディナーとかするんだろうなあ。あ、噴水まである。
店員は返事をすると席を離れていき、やがて姿が見えなくなった。
「もも、どう思う?」
「へ?噴水まであるんだーって思った」
宗太に聞かれ、思ったままに答えてから違ったと気が付いた。
そんなんじゃないだろう自分。
「…ちげえ、雰囲気とかだよ!!」
「ご、ごめっキョロキョロしてて!!」
恥ずかしい…。話聞かない子みたいじゃん。
「俺は結婚してえと思った!!」
「おめーの話はどーでもいい」
厳しく瑠衣斗に突っ込まれても、龍雅はめげる様子もない。
今の雰囲気だけでそう思えてしまう龍雅の想像力は、ある意味すごいとは思うけど。
「えっと、ここがいいと思う」
龍雅は無視しておいて、改めて答えた。
「他にも候補は用意してんだけど、そんな気に入った?」
「うん。何か美春と俊ちゃんに似合う気がする。店員さんも感じいいし」
私の隣に座った瑠衣斗が、頬杖をついて私に目を向け、優しく微笑んでいる。
「そんなに気に入るとは思わなかった…」
一瞬、そんな表情にドキッとしたが慌てて打ち消した。
目を細めて笑う姿が、何だか眩しくて目を逸らした。
それでも、残像のように八重歯を覗かせて笑う瑠衣斗の姿が、頭に残ったように焼き付いていた。