「ねえ、私何も聞いてないんだけど…何するの?」


「あ、言ってなかったっけ?」


瑠衣斗の車に乗り込み、ふと思い出して運転席の瑠衣斗に声を掛けた。


「とりあえず飯!!話はそれからじゃ」



何となく助手席に乗る事に躊躇したが、普通に後部座席へ乗り込んでしまった龍雅と宗太に従い、いつものように助手席へと乗り込んだ。



逆に後ろに乗れば、龍雅に意識している事を悟られていたかもしれないと思い、シートベルトを締めた。


「欲求に素直だよね…良いことだよ」


「…嫌味に聞こえたのは俺だけか?」


「え?嫌味だよ」



騒がしい龍雅を乗せた瑠衣斗の車は、渋滞に巻き込まれる事もなくすんなり駅ビルの林立ちする賑やかな街中へとやってきた。



久しぶりに見る景色に、確実に心の中に真っ黒なモノが浸食していく事が分かる。



るぅの買い物に付き合って、それで“りな”さんと初めて会ったんだ………。



帰ってしまいたい衝動に駆られるが、帰るわけにもいかない。

何となく流れる景色を見る事しかできずに、煌びやかなビル群をひたすら眺めた。



あの人は私にとって、何かの導火線のような存在かもしれない。


できる事なら、会う事があっても、もう私なんかにかまってほしくない。



いつか、私の中の何かが爆発してしまいそうで、怖い。



「可愛い子いねぇかな〜♪いねぇな〜♪…なぁ〜、ももでもるぅでもいいからよ〜、誰か紹介してくれよお!!」



何だか痛い龍雅をほかりつつ、気持ちを切り替えようと努めてみた。


それでも、靄でもはってしまったように、心が晴れる事はなかった。