「ももは手先が器用だよなぁ。オヤジも従業員として欲しいって言ってたぞ」


「そお?適当にやってるだけなんだけど」



私の言葉にチラリと視線を向けた瑠衣斗に、何故か横目で睨まれた。


「な…なによぉ」


「適当だったんか。ちゃんとやれよ」


「…うざっ!!絶対やってやんない」



上から目線の言いように、軽くカチンとくる。



「痴話喧嘩すんなって〜。てか腹減った」


「痴話喧嘩じゃない!!」
「痴話喧嘩じゃねえ!!」



のんびりした龍雅のセリフに、顔が赤くなるような気がして慌てて否定した。


でも、見事に瑠衣斗とハモってしまい、言葉を詰まらせるしかなく、誤魔化すように龍雅を睨み付けておいた。



「お前ら相変わらずいいコンビだなあ」


「美春と俊もびっくりだな!!」


もうここは無視しておいた方が無難だと諦め、小さく溜め息を吐くしかない。



間違いなく、龍雅の言葉が引っ掛かり、うまく呼吸のできない金魚にでもなった気分だ。


「何でもいいからよ、腹減った」



呆れたように言う瑠衣斗の言葉に、今度は龍雅が眉をしかめて瑠衣斗を見つめた。


「おめーが寝坊したんだろうが」


「あい、すんません」







結局、宗太と簡単に瑠衣斗の髪を直してやり、4人で家を出た。


やたらと瑠衣斗に絡む龍雅が、余計にさっきの言葉を思い出させ、何だか気が乗らないまま瑠衣斗の車へと乗り込んだ。