髪をグシャグシャとかき混ぜ、ヘルメットを被った瑠衣斗は、軽く吹かしてから単車を発進させた。
瑠衣斗の言葉は、どんな意味があるのだろうか。
強引に付き合う事になったには違いないが、私はあまりにも無神経なんじゃないか。
慶兄は、本当にこんな私と付き合って、幸せだと思えるの?
思わずグッと腕に力を入れ、瑠衣斗の背中に頬を押し付けた。
暖かいぬくもりに、何故か無性に泣きたくなった。
どうして人の気持ちは、変えられないんだろう。
そしてなにより、自分の気持ちは何故自分で変えられないのだろう。
思ってもらえる幸せを、慶兄にも与えたい。
私なんかより、もっと慶兄を思って大切にしてくれる人が、絶対居るはずなのに………。
そう思う私は、ただの善人の振りをした最低な人間だ。
一度本心を覗かせたら、誰も周りから居なくなってしまうに違いないんだ。
だから…両親も私には勉強する事しか教えなかったのかな。
私は、人としては最悪な人間と分かっていたのかな。