ポツリと言う瑠衣斗の言葉は、すぐに雑音に掻き消されてしまった。


「心配…した…?」



おうむ返しに聞き返した私に対して、瑠衣斗は目線を合わせないまま唇を軽く尖らせ、小さく頷いた。


何だか胸がグッとなって、顔が上気するのが分かる。


不謹慎だが、可愛いなんて思ってしまう。



現金だな…私。



そして同時に、慶兄を思うと胸がチクンと疼いた。





「ゴメンね?心配掛けて…。帰ろうか?」


「そうしてもらえると有難い…ここは空気が悪すぎる」



げんなりして答える瑠衣斗に、思わず笑みが溢れた。



もう、考えるのはよそう。

瑠衣斗の気持ちは、瑠衣斗にしか分からない。


私の気持ちが、自分の心の奥底に真っ黒になって固まって居て、親友兼幼なじみでもある美春すら分からないのと同じで。




人の気持ちなんて、誰にも分からない。


言葉にしても、それが全てではないかもしれないし。



今の関係を壊したくない。

壊すぐらいなら、私はひとりぼっちでいる方がましだ。


「行くぞ。絶対離れんなよ」



そう言って、私の手を強く握るこの手を、私は守りたい。


「うん。大丈夫」



こうして、ずっとどこかで繋がっていたいから………―――。