「…唯ノ瀬さん」


「へ…あ、はい!?」



ポツリと呟くような瑠衣斗の声に、ハッと覚醒した。



見上げた瑠衣斗は、私を見下ろすように色素の薄い瞳を細め、前髪の間から整った鋭角の眉を寄せている。


「おん前はよ~…」


「…ゴメン……なさい」



とりあえず謝っておこう。


溜め息混じりに言う瑠衣斗は、何だか疲れているようにも見える。


そう思うと、何だか無性に申し訳なく思えてきた。


「るぅ…怒ってるよ…ね?ゴメン」



自分でも呆れてしまう。
突発的なここ最近の行動は、自分自身の意識ではないようで、セーブが効かない。


私、どうかしてるよ…。



冷静さを失い、周りに迷惑を掛けている。


前まではこんな行動、考えられなかった。


「……怒ってねえ」


「うそ…顔怖い」


「…悪かったな。生まれつきだ」



怒ってるに決まってんじゃん!!と言いたい所だが、立場を考えたらそんな事到底言える筈がない。


「じゃあ…なに」


「顔が怖ェのは生まれつきだって」


「それは分かったってば」



騒がしい人混みやタクシーのエンジン音が、とっても邪魔だ。

かと言って、こんな道の真ん中寄りで立ち尽くしている私達の方が、きっと邪魔に違いないけど。



「……心配した」