「………だれ」
ポカンとした瑠衣斗の声が、頭の上から降ってくる。
てゆーか、いつまでこの状態………。
「あ~…えっと、夏希?」
クスクス笑う夏希が、ゆっくりと距離をつめるように私と瑠衣斗に向かって歩いてくる。
「え~っと、さっき電話で話した奴なんだけど、初めまして」
「あ~…初めまして。瑠衣斗です」
腕の力が抜けた瑠衣斗から、慌てて離れて横に並び直した。
よく考えたら、こんな人混みで抱き締められたら目立つに決まっている。
おまけに、夏希の周りには人混みはなく、余計に目立ってしまっていたようだ。
「瑠衣斗ね。君かっくいーねえ!!うちで働かな……違う違う。もう大丈夫だな?気を付けて帰れよ~。じゃあな~」
ヒラリと手を上げて立ち去ろうとする夏希を、私は慌てて呼び止めた。
「夏希っ!!」
「…ん~?」
振り返った夏希は、優しく笑みを浮かべている。
「…ありがとう」
「ありがとうございました」
私がお礼を言うと、瑠衣斗も後から続くように言葉を繋げた。
「お。今度るぅちゃんも連れてこいよ~。じゃなあ」
ニッコリ笑った夏希は、手を振りながら人混みに紛れていった。