笑いを引っ込めた夏希は、ネクタイの根元を整えながら、淡々と口を開いた。


「そこまで行くから、近くに何があるか教えてもらえないか?うん、うん、あー……はいはい」


不安になりながらも、夏希なら大丈夫だろうなと思える。


「ももちゃん。また来いな?多分夏希はももちゃんも一緒に連れてってくれるだろうから。あ、来る時は連絡しろよ~?迷子なったらやべえ!!がはは」


「…分かってるっ」



死ぬ事まで考えていた人が、今では目の前でそんな事を感じさせない程明るく笑っている。


人は、こんなにも変われるんだ。



目の前で笑う純平は、本当に心から楽しそうに笑っている。


こうやって笑えるまでに、純平には何があったんだろうか。



昔の純平に似ているらしい私。

私は、純平のように、自分の事を話せる人間になれるのかな…?



「んじゃ、今から行くから。あ~…その辺…ある意味頑張ってね。じゃ」



……ある意味?



「ほい、携帯。じゃ~行くか。早く行ってやんねぇと」


「な、何かあんの?」



そんな事言われると、何か怖いしるぅが心配じゃん!!


「ん?ん~?来なれてない人間はちょっと大変かなあ?」


「…あー大体分かった!!」


私が分かんないよっ!!



チラリと夏希は私を見下ろすと、ニッと笑って見せた。


「行くか、今日おごり。んじゃ、純平店よろしくな」


「まだ早ェーし客入らねえよ。行ってらっしゃ~い」


夏希が立ち上がったので、慌てて私も椅子から降りて夏希の後に続いた。


「あ、えと、ごちそうさまっ」