「何ソレ」
笑って誤魔化したつもりでも、何だか顔が引きつる。
喉がやけに乾いたように、カサカサする。
目の前のグラスが、ほんの汗をかいていた。
両手で包み込むようにして持ち、グラスを口につけると、ささくれだった心が潤っていくようだ。
コースターに戻すと、氷とグラスがぶつかって、カランと小気味良い音を奏でた。
「こんだけ頑なだからなあ」
「だなあ。本心を出さないってゆーか?」
まるで、今まで夏希と純平二人で会話していたようにそう言われ、へえ~そうなんだ~?なんてうっかり口に出してしまいそうだった。
「別にそんなつもりないよっ」
「そうだろうな~。でも、たまには素直になってみればいんじゃね?難しいだろうけどな~。ま、泣いても誰も迷惑なんて思わねえよ」
夏希の言葉は、何だか深く考えさせられる。
軽く言っているようで、私の本質的なモノを見透かしてしまっているように思える。
「とにかくさ、一人で悩むよりは俺らの所で悩めよ。ここ、かなりアットホームな店だし、いろんな人間が来るぜ~」
「アットホーム…」
純平の言葉は、暖かい。
この二人が居ると、お客さんも家に居るようにくつろげるんだろうな。なんて思った。
「…ありがと」
「まあ、外でふらふらしてるよかよっぽど良いしなあ」
夏希がそう言った所で、再び私の携帯が着信を知らせた。