「純…平さんって、」


「あ、タメ語でいーし純平でいーよ」


「…変わってますねえ」



呟くように私から出た言葉に、夏希は笑うだけだ。


「えー!!まあ良く言われるかなぁ?」


「今さっき会ったばっかなのに、こんな事なかなか聞けない」


本当に気心の知れた仲なら、まだ分かる。

でも私はついさっき初めて顔を合わせたばかりだし。


「あ~。俺なかなか話さねえよ?ただ今回は、ももちゃんが俺と同じ匂いするんだよな~。何か見てると昔の俺みてえ」


「…捨て猫だから?」


「いえーす」



そう言ってグーをすると、ニッコリと笑った。


「あ、何か飲む?」


夏希が私に向かって顔を向けると、純平はカウンターに並べられた綺麗なグラスを1つ取り、私の前にコースターを置いた。


「あ…えとお茶で」


「へいよー」



二人は、友達なんだろうか。何だか不思議な関係に思えてならない。


そして私は、間違いなく彼らに何か惹かれるモノを感じた。


美春達に感じるモノと似ているようで似ていない、不思議な感覚だった。



でも、私の心の奥底に眠る何かは、頑なに出てくる事を今でも拒み続けているようだった。