声を抑え、不思議そうに私に視線を向けた夏希に向かい、軽く頭を横に振った。
「自分で帰れる…大丈夫だから」
『……繁華街に入ったら連絡する』
一方的にそう言うと、瑠衣斗は電話を切ってしまった。
「………ホント頑固」
はあ、と溜め息が漏れ、仕方なく携帯を畳んだ。
「…男?彼氏でもできたか?」
「え?あ~…彼氏ではないけど、彼氏…できた…」
夏希は何だかまとまりのない私の言葉を、一瞬考えるようにして眉をしかめたが、ふっと顔を緩めた。
「今のは男だけど、彼氏じゃなくてツレって事か」
「うん、そう」
応えた私に向かって純平は、ほおんと答えてグラスを拭いている。
「ももさ~、俺ら会ってまだ2回目だけどよ、何で会う時あんな顔してんの?何かあんのか?」
「…え?あんな…顔?」
「ん~…脱け殻みてえな…まあ、捨て猫みてえな?」
そんな事言われても…分かんない。
「夏希はこー見えて、ぜってェ歳誤魔化してるんだよ~。観察力ありすぎっ」
「うっせえなぁ、んだソレ」
「ももちゃん?」
突然向けられた純平の視線に、思わず驚いてしまった。
「は…え、はい?」
「俺もね、夏希に拾われたんだ~」
俺…も??