これから…どうしよう。
家の前にるぅが居たらどうしよう。慶兄が居たらどうしよ……。
「…捨て猫チャン??」
少し離れた場所から聞こえてきた声は、車の騒音によって遮られながらも私の耳に届いた。
声のした方へ振り返ると、思わず笑いが漏れてしまった。
「え?なに?まじ偶然なんだけど!!またこんな場所で1人で何してんだよ」
大股で近付く夏希に、笑みが溢れた。
何でこの人は、前回といい私が落ちている時に遭遇するのだろうか。
「また1人で散歩してんの?」
不思議そうに私を見下ろす夏希は、スラリとした長身に、何だかブランド物っぽい白のシャツに、キラキラするカフスに細めの黒いネクタイにタイピンを付け、黒のパンツ姿だ。
「……また散歩」
「そーかあ~また何かあったのか~」
納得したように腕を組んで、そうかそうか~。と言う夏希に、反論する気も起きなかった。
「俺今から店行くんだけど…来る?」
そう言いながら私を覗き込むように見下ろす夏希は、鼻に小さなシルバーの丸いピアスを付けている。
前…あったっけ?
なんてのんびり考えていると、スッと夏希が隣に並び、私の手を取った。
「まあ、勝手に連れてくけど」
「別にいいよ。あ、充電器あったら貸して欲しい」
引かれるままに、私は夏希と並んで繁華街へと向かった。