「くれんの?」
「なワケないじゃん」
そう言いながら立ち上がると、瑠衣斗はいつものように私の鞄を取り、大きく伸びをして目を固く瞑った。
「―…っはぁ、行くか」
並んで講堂から出ると、賑わっている廊下をのんびりと歩き、学内にある喫煙エリアで飲み物を買ってテーブルに座った。
「ももは真面目だな~。んな頭良くてどーすんだよ」
煙草を加えながらそう言うと、フッと顔を逸らして煙を吐き出した。
「良くない…てゆーか寝てばっかで頭良いるぅに言われてもね」
他県から高校を受験してくるだけでも、結構な成績がないと難しいだろう。
初めて会った印象も印象だったので、テストの順位の貼り出しを見た時の衝撃は素晴らしい物だった。
「私より成績良かったじゃん」
「順位なんか一つ違いだろ」
真面目さがちげ~んだよ~。なんて言う瑠衣斗は、確かに真面目そうには見えないと思うけど言わない。
「…慶兄来るのか」
突然出てきた名前に、飲みかけていたアイスコーヒーを吹き出しそうになり、思わずむせてしまった。
「ゴホッ…んっ、ぅ、うん」
「動揺しすぎ。何だよその反応」
呆れたように言う瑠衣斗に、むせたせいで赤くなってしまった顔を向けた。
「してないっ!!」
「あけーぞ?顔」
「むせたからじゃんっ」
ムキになってしまう自分が、何だかおかしく感じた。