両手でマグを包み込むようにして、一口珈琲を口に含んで飲むと、少し荒れた心がホッと解されていくようだ。


「ちょっと落ち着いたか?」



隣に座った慶兄は、ソファーにもたれて優しく私を見下ろしている。


「うん…何か……ゴメンね」



見ていれなくなって、目線を直ぐ目の前のテーブルに落とした。



慶兄が動く気配がして、思わず横を見ると、膝に両腕をついてかがみ込んだ慶兄と目が合った。


さっきとはうって変わって、真剣な眼差しを私に向ける慶兄に、思わずドキリとした。


「謝るな。何があったか話したくないなら話さなくていい。ただ、俺の前では無理も我慢もすんな」



色素の薄い瞳が、じっと私を見つめている。


私はただ見つめ返す事しかできず、言葉も出ない。



慶兄はスッと視線を外すと、自分のマグをテーブルに置き、私からもマグを取ってテーブルに置いた。



再び向けられた視線は、やっぱり真剣なままで、同時に慶兄の腕が伸びてきて私の頬に触れた。