「ちょっと待ってろよ」
広いリビングへ入ると、広いソファーに私を座らせた慶兄は、ジャケットを脱ぐとネクタイを緩め、首元のボタンを外しながらキッチンへ入っていった。
たくさん泣いて、スッキリしたはずなのに、何かまだ心に引っ掛かったモノがあって、心が曇っている。
ずっしりと私の心に、居座ってしまったようで、消えてくれずにチクチクと胸を痛めている。
この痛みは、何から来ているんだろう。
今まで散々言われた事も、視線も、気になる事はなかった。
それなのに、どうして今更こんなにも辛いのだろう。
どうしてこんなにも、ひとりぼっちは寂しいんだろう……。
「もも?どうした?」
「っう…ううん」
マグを2つ持った慶兄が、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
気配に気が付かない程、私はボーッとしていたみたいだ。
「これ飲んで少し暖まれ」
マグを一つ受けとると、暖かさが手から伝わり、珈琲の薫りにホッとする。
「…ありがとう」
喉がヒリヒリして、少し掠れたような声が出て自分で可笑しくなった。