「歩けるか?おぶってやるぞ」


ただボーッとしていた私は、いつの間にか着いた慶兄のマンションに、全く気が付かなかった。


「あれ…?あ、大…丈夫」


「そうかそうか」



軽く笑いを含んで言う慶兄は、エンジンを切ってシートベルトを外した。



釣られるように私もシートベルトを外すと、それを確認した慶兄はドアを開け、習って私も車から降りた。



目の前に高く聳え立つマンションを見上げると、慶兄が私の側まで来て私の手を握った。



慶兄を見上げると、ちょうど慶兄の上に青白い月が輝いていて、不思議な感じがする。



サラサラと風に流れる髪の間から、色素の薄い瞳が私を優しく見つめていた。



まだ少しぼやけて見える慶兄は、見とれてしまう程綺麗だった。