「…おう。見付けたぞ。…うん、あ、いや…」


龍雅が離れて行く気配がし、同時に声が耳に届いた。


「もも…お帰り」



慶兄の優しい声が、私の涙腺を止める事はなかった。


優しい温もりと声に、安心しきったったように堪えていた声が漏れてしまう。



「っうぅ…ぅえっ…ふぇぇ」


「泣ける時は泣けばいい。我慢するな」



きっと、いっぱい心配をかけたに違いない。


沢山の着信とメールは、慶兄や龍雅、宗太や美春や俊ちゃんからだった。



「瑠衣斗から連絡あってなあ…何があったかは知らないけど、ちゃんと帰って来たから良かった」


「っごっ…ふ、っごめ…っ」



言葉にしたいのに、嗚咽が止まらず言葉にできない。


ただ泣く事しかできない私は、慶兄の言葉によって再び心に嫌な感覚が蘇ってきてしまった。


ギュッと抱き締める慶兄の腕は、同じ兄弟の瑠衣斗とも違い、とても優しいものだった。