「もも…?」


家から少し離れた所でタクシーを降り、ゆっくりとした足取りで家に近付いた。


名前を呼ばれて顔を上げたが、ぼやけてしまって輪郭がやっと分かるくらいだ。



目の前が涙で滲んで、顔が見えないよ……。



「どうした…?誰かに何かされたか?」


駆け足で近寄ってくると、困惑したように私に向かって声を掛け、すぐに優しく私を抱き締めた。


「慶兄、るぅに連絡する?」


「そうだな…でも今は来るなって伝えといてくれ」



龍雅が後から付いてきたようで、慶兄の他に誰か居る事には気が付いたが、背丈や格好からは瑠衣斗ではないと気が付いた。


暖かい温もりに、既に決壊してしまった涙腺は、更に勢いを増したように次々と涙を溢れさせる。



そして、瑠衣斗の名前を聞いた途端、心臓が鷲掴みされたように一瞬息が詰まった。