夏希が支払いを済ませ、並んで出てくるとビルを見上げた。
…やっぱりラ、ラブ…ホテルだ。
「…初めて来た」
「え!?まじでえ!?」
ポツリと呟いた私に、夏希はまた驚いた声を上げた。
見上げると、瑠衣斗や慶兄に負けないくらいの長身で、改めて見るとやっぱり整った顔立ちだ。
「彼氏と来た事ねえの?」
「彼…氏……はずっと居ない」
何と言えばいいか分からず、曖昧に答えるしかできなかった。
「今時珍しいなあ~。俺第一号な」
笑って話す夏希に、ふと疑問が浮かんだ。
「夏希って…何歳?」
「俺?24」
なるほどね。だからヤバいのか。
一人で納得していると、頭に暖かい感触と重みが加わり、顔を上げた。
「家まで帰れるか?」
覗き込むようにして屈んで私を見詰める瞳は、どこか心配そうに揺れている。
「…お兄ちゃんみたい。大丈夫だよ」
慶兄とも違う、何だか暖かい気持ちが胸を占めた。
今日会ったばかりなのに、不思議な感覚だ。