「大事にしろよ?安売りするモンじゃねえ。何あった知んねぇけど」



何も言えない私に、夏希はベッドの下に落ちていたらしい服を取ると、手早く着込んだ。



「…なん…で…」


男の人って…やっぱり良く分からない。


「とにかく、何かあったら連絡してこいよ。あり得ねぇ状況であり得ねぇ事言ってる事は分かってるけど」



胡座をかいて私に目線を向ける夏希は、優しく笑ってそう言うと、携帯を2つチラつかせて見せた。


「赤外線しといてやったから」

「…へ!?」



本当に、何を考えているんだろう。ただ漠然とだけど、夏希が言う通り、私をどうこうするつもりなんかなかったみたいだ。


しっかりと服を着ていた私に、携帯を手渡すと、夏希は再びニッコリと笑って見せた。



「捨て猫拾ったみてえ」


「猫っ!?な、なにそれっ」



何だか不思議な気がして、ふと気が付いた。


初めて会った人なのに、こんなに落ち着いて話せるのは、どことなく会話の雰囲気が瑠衣斗と似ている気がする。



胸が疼くように、切なく軋む。思わず苦笑いしてしまった私に、夏希は優しく微笑み返してくれた。