「ごっ、ごめんなさい帰るっ」



アワアワと慌て出した私に向かって、夏希の手が伸びてきた。


「まじで帰る?」



私の腕を掴んだ夏希を、思わず振り返った。



「うっうん。ご馳走様でした!!」



慌てて体を起こすと、すんなりと夏希の腕は離れ、私を解放した。



「また付き合ってよ?電話する」


「……へっ」



あっけなく離された腕から、夏希へと視線を移した。


「良かったなあ~声掛けたのが俺で」


「…は?」


ニコニコと笑う夏希は、肘を立てて体を横にして私を見上げて笑っている。


ぽかんとするしかなく、ドキドキと高鳴る心臓は、口から飛び出しそうだ。


「普通ならヤられて終わりだぜ~?俺で良かったなあ」


「………」



そうかもしれない。


頭の片隅では、分かっていたハズだった。

自暴自棄になっていた私には、どうでも良かった事でもあり、心も体もめちゃくちゃにしてしまいたかった。


全てを捨て、他人の温もりを求める事も、悪くないと思っていた。



自分の意識ではなく、他人の意識で傷付けてほしかった…。



「何かよ~、女の子一人でこんな場所に居るし、今にもやべえ奴等に声掛けられそうな雰囲気だったから、俺が声掛けちったぜ」