「あんなトコで何してたの?」


隣り合ってソファーに座っているため、顔を上げるのも面倒臭い。


カップルシートか何かだろう。余計な気遣いしなくていいのに。



「別に…散歩」



適当に頼んだカクテルは、一杯でも酔ってしまいそうな程、結構なアルコール度数だろう。でも、気にならないくらい美味しい。



「へえ…?奇遇だなあ~俺もだよ」


私の顔を見ているみたいだが、私は顔を上げなかった。


夏希のユニセックスな香りの香水が、程好く漂ってくる。



テーブルに並べられたお皿には、まだほとんど料理が手付かずで残っている。


サラダのプチトマトをつまみ上げ、口の中に放り込んだ。



「こんな可愛い子…一人で居たら危ねえよ?」


流れるように、私の後頭部から頬へと手を滑らせた夏希の手に、思わずビクッと反応してしまう。


「……今は一人じゃないけど」



やっぱり目を合わせる事なんかできず、大袈裟に反応してしまった事を誤魔化すように、目の前のカクテルを一気に飲み干した。