顔を上げると、いかにも軽そうな男が、私の目の前に立ち塞がるようにして立っていた。


「……どいて」



放っておいてほしい。そう言葉に込めて相手を避け、再び歩き出した。



気が付くと、全く知らない場所まで来ていたようだ。


薄汚れた裏通りは、何とも言えない怖さが溢れているようだ。


…繁華街だ。


きらびやかなネオンが、日の落ちた空を照らすように、明るく輝いている。



「なあ、暇じゃね?遊ぼうぜ~」



ここからは星なんか見えないな…。



見上げた空は、赤のような、オレンジのような、奇妙な色を空に反射させている。


後ろをまだ付いてくる気配を感じながら、虚しさを感じた。



あなたも一人じゃん。暇なのは、あなただけだよ。




「…楽しい事ある?」



空なんて、いつぶりに見上げただろう。


久々に見上げた空は、星一つも見付ける事ができず、代わりに奇妙な色に染まっていた。




心で燻っている小さな火が、時々風に揺れ、私の心を小さく震わせる。


何か…疲れちゃった。



チリチリと、心が焦げるような音がしたが、気付かない振りをした。