何か話をずらされた気もする。

瑠衣斗とジュリのあの雰囲気は、何とも言えない気まずさがあったけど、こうやって普通に話せているし気にしすぎかもしれない。



少しツーンとさた顔をした瑠衣斗と軽く睨み合っていると、瑠衣斗の携帯が慌ただしく鳴り出した。


「お。わりい電話だ」



そう言って、パンツから携帯をゴソゴソと取り出した瑠衣斗は、画面を確認する様子もなくすんなりと電話に出た。



「もしもし」



瑠衣斗の声を聞きながら、窓の外に目をやった。


桜は葉桜に近く、青々とした草木は、夏が近い事を知らせているようだ。



殆んど吸わなかった煙草は、フィルター近くまで燃えていて、灰皿に押し付けて揉み消した。




今年で五年経つんだ…。



遠い日の記憶は、ふとした時に鮮やかに蘇ってくる。


目に焼き付いたように、あの時の光景は、私の心を傷め続けていた。



「は…?来ちゃったって……」



瑠衣斗の戸惑ったような声に、窓の外を眺めていた視線を、瑠衣斗に向けた。


それと同時に、一瞬息が詰まるように胸が締め付けられ、じわじわと嫌な感覚が胸から広がっていくようだ。