「ちょっと!?は、離してっ」


瑠衣斗の胸を力いっぱい押しても、全く意味もない。


やだ!!触られたくない!!



「もも、聞けよ」


耳元で聞こえる瑠衣斗の声は、私を落ち着かせようとしているようだ。

でも、グッと腕に力を込められると、余計に反発したくなってしまう。


「やだやだ!!離してよ!!」



あの子に触らせた腕に、抱き締めてほしくなんかないよ。


尚も抵抗する私に対して、瑠衣斗も腕の力を緩めない。それどころか、もう身動きすらできていない。


「聞けって!!!!」



「…っ」


突然聞こえた瑠衣斗の怒鳴ったような声に、私は息を飲んだ。


「…ももさ、」


ふっと力が緩み、今度は優しく包まれるように後頭部と背中に腕が回された。



瑠衣斗の甘く爽やかな香りが、濃く香る気がして酔いそうだ。


「親父さん達が亡くなってから、泣いた事ねえだろ」



「……え」


グッと胸を圧迫するように、息苦しい。




瑠衣斗は…何が言いたいんだろう。


私は、聞くべき…?