もー、何なの。
はぁ、と溜め息をついて、目を軽く閉じると、ソファーから体を起こした。
瑠衣斗が居ると、思い出しちゃうじゃん。
昼間の言葉は、自分が自ら最も触れようとしなかった事だ。
家族の死を、私はまだ受け止めきれてないのかもしれない。
「何でおめー泣かねえの?」
「…は?」
瑠衣斗が言っている意味が、ちんぷんかんぷんだ。
「だーから!!泣きたい時は泣けばいーじゃねえか!!」
「な…に…?」
ひょっとして瑠衣斗は、私が昼間の事で、泣く事を我慢しているんじゃないかと思っているんだろうか。
だとしたら、検討違いだよ。
「ももさ、何で泣かないわけ?」
「何で…って」
「何で我慢すんだよ…」
「……してないよ」
目線を外した途端、視界が暗くなった。
ふわりと香る甘く爽やかな香りが、温かく私を包み込んでいた。