「美春…?」


私に背中を向けたまま、そう口にしたきり何も言わない美春に、私は声をかけた。



普段めったに怒らない美春が、私のせいで気分を悪くさせてしまった気がして、申し訳なく思う。


「ごめんね…?体にも赤ちゃんにも悪いし、落ち着いて」


そっと顔を覗き込もうとして、美春に近付くと、美春が顔をあげた。


「ももが謝る事ない!!何か…ムカついちゃって」


力強く言ったと思うと、すぐにシュンと俯いてしまった。


「…ありがとう」



不思議と、私はスッキリした気分だった。


美春の気持ちが、嬉しかった。


「もも…。美春、るぅちゃんに酷い態度だったよね」



きっと、美春は妊娠した事で感情の起伏が激しいんだろう。




「大丈夫だよ。何年の付き合いだと思ってんの?」


「…うん」


そっと、美春の背中を撫でてやると、だいぶ落ち着いてきた美春は、苦笑いを浮かべて私に目線を移した。