「前はさ…壁があったと言うか。思った事を口にしない感じだな」
「…え!?そう見えてた…の?」
「ポーカーフェイスってイメージだなあ」
…何か格好良く言ってくれるけど、結局は素直じゃないって事だよね。
「前も言ったけど、強そうに見えて弱いんだよなあ…」
慶兄は笑いながら言うけど、何だか物凄く恥ずかしい。
私って、そんなに素直じゃなかった?
確かに、必要以上に思った事は言わないけど…。
「龍雅みたいに、思った事を話しすぎるのもどうかと思うがな」
「うん。あれはどうかと思う…」
景色と、慶兄のほんわかした雰囲気が、私を素直にさせていくようだった。
空気が澄んでいるようで、遥か遠くまでがハッキリと見える。
瑠衣斗と行った駅前のビル群が、私の胸を締め付けさせ、何とも言えない感情を、私は持て余すだけだった。
慣れているようだった瑠衣斗のキス。
親しげに繋がれたりなと言う彼女と瑠衣斗の手。
冷たい瑠衣斗の低く響いた声。
私には、瑠衣斗が分からない。