渋々車から降りると、一直線に慶兄まで駆け寄った。


「…なに?そんなに怖いか?」

キョトンと見下ろす慶兄は、街灯のおかけで顔が分かる程度。

「逃げちゃダメだよ」


じっと慶兄を見上げ、釘を刺しておく。


そんな私に、慶兄は瞳を細め、優しく頭を撫でた。


「鬼ごっこは得意だった」


「…何それ」


思わず笑った私に、慶兄も笑うと、ゆっくりと歩き出した。



「少し歩くだけだから。ちょっと我慢しろよ」


そう言われて先を見ると、遊歩道があるらしく、木の生え茂る中を歩けるようになっていた。

申し訳程度に足元だけ照らされているが、顔を上げると先は真っ暗だ。


また背筋にゾクッと寒気が走り、とっさにグッと慶兄の手を握り、腕の服をもういっぽうの手で握り込んだ。


風でザワザワと木々が揺れ、何か巨大な生き物が動いているようだ。


いちいち驚く私に合わせて、慶兄は笑いながらゆっくり歩いてくれる。


心臓がバクバクと高鳴り、あり得ないくらい神経質を尖らせた。


「ほら、もう抜けたぞ」