「…意外」
思わずそう口にすると、慶兄は前を向いたまま笑った。
「俺も意外。ただな、今だに向いてるのか向いてないのか、悩むけどな」
「そう言うモノなの?」
チラッと私に目を移すと、微笑んだまま前を向き直した。
「仕事なんてそーゆうモン。夢だって、実際叶ったとしても、いつか迷う事はあるんじゃねえかな」
「…そんな気がする」
だから、悩まなくていいって事なんだろう。
いつか、私にも夢ができて、叶った時に悩めばいいんだ。
「若い今は、いろんな事を経験すればいい。悩むのはそれからでいいんだよ」
「…そうだね」
「やりたい事をやれる人間なんて、なかなかいねえけどなあ」
悪戯っぽく言う慶兄は、何だか楽しそうだ。
「最後に思いっきり突き落とさないでよ!!」
「現実は厳しいぜよ~」
何だそれー!!感心させるだけさせてそれはねえぜよ~!!