う~んと悩む私を、一瞬チラリと見ると、慶兄は笑って言う。


「夢は、悩むモノかもしれないけど、悩むモノじゃねえぞ」


「…ん??」


頭の良い慶兄の言葉が理解できない…。


頭の造りが違い過ぎるんだろうけどさ。


「ん~そうだな。誰だって、将来なんて分からないだろ?」


「うん…」


じっと慶兄を見つめ、慶兄の言葉に集中した。


「俺もな、医者になろうなんて思ってなかったんだぞ」


「え、そうなの?」


お医者さんとかって、本当に昔から頭良くて、医大とか長い間通って、更に研修医としても勉強して…めちゃくちゃ大変じゃないの?


「ある事がきっかけで、ひたすら勉強ばっかりしたよ。医者になれる保証なんてないのにな」

「…そうだったの?」


てっきり、昔から頭良くて、そのままお医者さんを目指してたんだと思ってた。



「なりてえモノとかやりたい事、なかったなあ」