「フランス行った事ないって、生まれが日本て事?」


「そうだね。日本国籍だし、桐生って言う渋い名字だったりする」


キリュウ――…確かに渋い。


「本当に渋いね」


クスクスと笑って、ココアを飲み干してしまうと、肘をついて私に向き直った。


「今日はありがとう。僕の無理に付き合ってくれて」


はにかむように笑って言う姿に、ふっと顔を緩めた。


「いいよ。友達でしょ?」


からかうように応えると、ジュリは一瞬キョトンとしたが、また笑いだした。


「ももには敵わない気がするよ」


「どーゆう意味か分かんない」

昨日はあんなだったけど、ちゃんと話してみるととても喋りやすい。


「また付き合ってね」


腕を組んで首を傾げるようにして笑う姿に、すっかり私は気を許し始めていた。


「うん。そうだね」


「んじゃ、そろそろ行こうか」


頷いてから私も飲み物を飲み干してしまい、お互いに席を立った。


瑠衣斗並みに高い身長は、周りの視線を独り占めしている。


そんな視線も露知らず、ジュリは颯爽と長い足を動かし、その後を私は追ったのだった。