「お腹触りたい!!触っていい?」


そう言った私に、クスクスと美春は笑う。


「いいよ」


ニッコリ笑う美春は、優しくお腹を撫でている。


そっと下腹部に触れ、ここにあんなに小さな赤ちゃんが居ると思うと、不思議な気分だ。


「すごいね…生きてるんだね」

「うん。私…この子絶対守るよ」


好きな人との子供なら、誰だって産みたいと思うだろう。


「早く会いたい…」


愛しそうにお腹を撫でる手は、どこまでも優しく、お腹の赤ちゃんに美春の声が届けばいいのに。と思う。





その時、バーン!!と玄関から音がして、二人で驚いて玄関を弾かれるように振り返った。


驚きのあまり動けずに居ると、慌ただしい足音がバタバタとリビングへと向かってくるのが分かる。


きっと俊ちゃん…だと思う。


勢い良くリビングのドアが開くと、黒いヘルメットを被った俊ちゃんが、息を切らして立ち止まる。


「俊…ちゃ…」


遠目からでも分かるほど、額からは汗がいくつも吹き出している。


切れ長の目が、大きく見開かれ、肩で息をしている。


きっと、車ではなく単車を飛ばしてきたのだろう。


「…美春」


やっと口を開いた俊ちゃんは、ズカズカと足早に美春に近付くと、思い切り美春を抱き締めた。