美春が鼻をすすりながら、携帯をいじり、耳に当てた。
ドキドキと強く鳴る心臓が、周りの空気を薄くしたようだ。
グッと手を握った美春の顔からは、涙はもう出ていない。
「…あ、俊ちゃん…」
思わず唇を噛み締め、じっと美春を見守った。
すーっと一回大きく深呼吸してから、美春は決意したように口を開いた。
「あのね、私ね、…お腹に赤ちゃんがいるの」
沈黙が、永遠のように長く感じた。
息を止めて美春を見つめるていると、途端に受話器から物凄い声が聞こえた。
え?えっ?今の声俊ちゃんだよね?
美春の顔を覗き込むと、美春は眉を寄せ、訳が分からないと言うような顔を私に向ける。
あまりにも大きな声に、思わず美春が受話器を遠ざけると、プープーと通話を終了した機械音が小さく聞こえてきた。
「………え?」
ポカーンと携帯を見つめる美春は、本当に何も聞き取れなかったらしい。
てゆーか……本当にえ?だよ。