「美春!?」
二階建てのシンプルなアパートの扉を、勢い良く開けて慌てて中に入った。
「ももぉ…」
私の顔を見た瞬間、うるうるとした大きな瞳から、ボロッと涙がこぼれ落ちた。
「なになに~、どうしたんだよぉ~」
苦笑いしながら美春を抱き締めると、私の胸に顔を埋め、堪えていたように嗚咽して泣き出してしまった。
「うええぇ~っ…ぐ、ええぇ~」
当分泣き止みそうもなく、私は美春の背中を、優しく撫でて泣き止むのを待った。
大きく嗚咽するたびに肩が揺れて、細かく震えている。
まさか…俊ちゃんと何かあった?
喧嘩はよくしていたが、ここまで泣く美春は本当に珍しい。
「よしよし、いっぱい泣け泣け」
頭を撫でてやったり、背中をポンポンしてあげ続けると、少しずつ美春も落ち着いてきた。
話をせかす事はしたくない。
美春が、話したくなった時に話してくれればいい。
ぐっと美春に抱き付かれたまま、私より大きな美春を撫で続けた。