なおも納得してくれない瑠衣斗を、何とかして車を発進させた。
変な所でいっつも鋭いんだよね。
ボーッと流れる景色を見ながら、時折流れている歌を口ずさみ、会話もなく車は道を進んだ。
しばらく走ると、駅前の背の高いビルが立ち並ぶ場所までやって来た。
人が地下鉄の出入口から溢れ返り、タクシーが暇そうに客待ちしている。
様々なブランドショップや、宣伝看板が、あちこちに目映い雰囲気を放っていた。
「何買うの?」
「ん?いろいろ~」
少し解れた顔で前方を見る瑠衣斗の横顔は、いつもの表情に戻っていたので、ホッと胸を撫で下ろした。
地下の駐車場に入ると、割りと空いていてすんなりと駐車できた。
「行くか。迷子になんなよ」
いやみっぽく笑う瑠衣斗に、軽く睨み付けてからドアを開け、車から飛び降りた。