そろそろ珈琲ができる頃かな?と思い、キッチンへ入った。


マグに入れておいたお湯を捨て、淹れた珈琲をマグへ注いだ。

2つのマグを持ってソファーに近付き、テーブルへ置いた。


「できたよ」

と声を掛けて腰掛け、隣で仰け反る瑠衣斗を伺った。


「う~ん…」

目を閉じて眠そうに返事をするだけで、ピクリとも動かない。

長い睫毛がびっしりと濃く敷き詰められた目が伏せられ、整った顔立ちがハッキリと分かる。

きめ細かい肌に、思わず触りたくなる衝動に駆られた。


また心臓が、トクトクと鼓動し始め、指先が痺れるような感じに襲われる。


「…えい」


「いでっ!?」

瑠衣斗はパチリと目を覚ますと、顎に手を当てながらビックリした顔で私をまじまじと見ている。


「珈琲できましたが」


「髭をひっぱんなよ~」

軽く睨むように私に言うと、マグへ手を伸ばした。


「すぐ寝ちゃうんだから~。ある意味ホントに特技だよね」


正面を向き直ってマグに口を付けると、ホッと息を吐いた。


「たまには俺を労れ」


ポツリと言う瑠衣斗を見上げると、目を細めて憎たらしく口の端を持ち上げた。