「ももんち久々だなあ。てか1人で来る事が久々だ」
鍵を空ける私の後ろで、瑠衣斗がそんな事を言った。
「だねえ。高校の頃はよくうちのお父さんに呼ばれて来たもんね」
さり気なくそう言うと、ガチャンと音を立てて鍵が空き、玄関を開けて瑠衣斗と中に入った。
「お邪魔します」
「どーぞ」
玄関と廊下の電気を付けながら玄関を上がって、直ぐあるリビングのドアを開けて電気を付けた。
「荷物こっち置いとくな」
「あ、うん。ありがと」
キッチンへ入る瑠衣斗を見送り、広い大きなソファーに鞄を置いた。
「いったああぁ~切った!!切った!!げっ血ぃ~!!」
「おい~大丈夫かよ!?ったくよお~」
お料理上手な瑠衣斗は、こうしてお料理下手な私と一緒にキッチンに入ったままだ。
水で血を流してしまうと、瑠衣斗は私が切ってしまった左手の人差し指を掴んで見ている。
「深く切ってないな。きちんと洗って消毒して、絆創膏しなさい」
「あ~い…」
今でこそ自炊はするが、ハッキリ言って料理は苦手だった。
勉強ばかりさせられた私は、包丁と言う物を触らせてもらう事がなかった。
キッチンにお母さんと並んで料理した記憶は、一度もなかった。