「なあもも、腹減らねえ?」
「お腹減ったの?」
ふと、腕時計を見てみると、何だかんだで夜の10時を過ぎた所だった。
バーベキューでたらふく食べたので、腹持ちが良かったらしい。
「言われてみれば…減ったかな?」
「何か食ってくかあ~」
見上げると、口元に笑みを浮かべた瑠衣斗が目に入った。
朝見た時よりも、髭が伸びているように思える。
「ねえ、ずっとお世話なりっぱなしだし、何か作るよ?」
何気なく言った私の言葉に、瑠衣斗は目を見開いて私を見た。
「前見て!!」
「あ?ああ、ゴメン」
慌てて前を向き直るが、まだ表情は目をぱっちり開けたままだ。
「なに?どうかしたの?」
「え?いや、何でもねえよ」
ふぅと息をつくと、瑠衣斗は落ち着いて口を開いた。
「んじゃ~…お言葉に甘えますかね」
「じゃあどっかで買い物してこ?」
「はいよ」
ニッコリと笑うと、瑠衣斗は長い前髪をかきあげながら、ハンドルを握り直した。