「ねえもも~、夕日がおっきいよ!!」



そう言ってビニールシートに座って振り返った美春は、大きな夕日を背に、明るく微笑んだ。



夕日が海に映り込んで、どこまでもオレンジ色に輝く海は、大きな夕日が溶け込んでいくようだった。


「うん、すごい綺麗…」


全ての物をオレンジ色に染め、景色の表情を変えさせる。





後片付けは済んでしまって、夕焼けに染まる限られた時間の景色を、思い思いに過ごしていた。


ベンチに座ったまま上を見上げると、淡いピンク色だったサクラが、色を濃くして赤く揺らいでいる。


茜色に染まった空は、何故か私の心を切なくさせた。


桜の花びらは、茜空に舞う花びらとなって、風と共に私の髪をさらっていた。


ぽかぽかと暖かかった時間は、徐々に肌寒さを迎えてきていた。



「寒くねえか?」


ふと気が付くと、慶兄がベンチの横に立っていて、その気配に全く気が付かなかった。



「あ、うん、ちょっと寒いけど大丈夫!!」


私の返事を聞くと、慶兄はそのまま私の横に腰を下ろした。