名前を呼んだ声は、宗太だった。
慶兄はかすかに口元に笑みを浮かべているが、何となく視線が瑠衣斗に向けられているようで。
いつものような事が、慶兄の告白により、少しずつ変わっていくような気がした。
この気まずさや、見られた事に対する抵抗感は、慶兄の事を意識している事には間違いない。
好きだから、見られて都合が悪いとか、勘違いされたくない。
と言うような感じではなかった。
私は、何だか瑠衣斗を巻き込んでいるような気がして、そう思ったのだった。
「お前らおせえよ」
笑いながら近付いてきた宗太がそう言うと、瑠衣斗が口を開いた。
「ももが歩く速度がおせえんだよ」
「…悪かったわねえ」
瑠衣斗を見上げると、いやらしく口元で笑っていた。
「迎えに来ちゃったよ」
声がして見上げると、にこやかに慶兄が笑っていた。
心臓がぐっと縮んだ気がして、胸が苦しい。
あぁ、私意識しまくってる!!
変な緊張感が全身を包み込み、この場を離れたい衝動に駆られるが、逃げる訳もいかない。
う～ん、とっても心臓に悪い。
