しばらく向かい合って揉み合っていると、遠くから名前を呼ばれた気がして、一瞬動きを止めた。
「ん?どうした?」
瑠衣斗も同じように動きを止め、頬から手を離さないまま顔を覗き込んだ。
波の音が間近に聞こえるせいで、はっきり名前を呼ばれたかは分からない。
「ひゃまうぇよわ…」
……おい。
私が瑠衣斗に視線を合わせて、「名前呼ばれた気がする」と言い切る前に、体を折り曲げて肩を揺らしている。
手はそのまま離さないままで、またひーひー言っている。
一瞬力が緩んだ気がして、思いっきり瑠衣斗の両手をはたいた。
ぱっと手が離れ、頬の皮が元に戻ると、
両手で頬を擦って、もう捕まれないようにガードしてみた。
何か延びた気がするけども。
「あ~。まじ笑った~。ふう」
そう言って顔を上げると、目に涙をためながらニコニコ笑っている。
「るぅ本っ当最悪!!バカ!!」
ジロリと睨み付けると、瑠衣斗は口の端を持ち上げるように笑った。
「もも~!!」
え?と、声がした方に振り向くと、少し離れた海岸から、宗太と、そして慶兄が歩いて向かって来る所だった。
チラッと瑠衣斗を見ると、一瞬こちらに目を配り、また視線を戻した。
多分同じ事を思ったんだろう。
何となく、慶兄に見られた事に抵抗があった。
告白された事に、何となく気まずさを覚えた。