遥か遠くに、ゆっくりと進む船が見えた。
きっと近くで見たら、物凄く大きなフェリーか何かだろう。
他にも、小ぶりな漁船や、たまに跳ねる魚なんかも見える。
カモメが風に乗って鳴いているが、頭上では鳶なんかの鳴き声もする。
山も近いし、きっと寝床なんか近くにあるのだろう。
キラキラと輝く広大な海は、私の存在なんか、本当に物凄くちっぽけな存在だと思い知らされてしまう。
ゴオゴオと音を出す白波は、全てを飲み込んでしまうようだ。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
缶の中身は殆んど無くなってしまった。
数本目のタバコに火を付けた瑠衣斗が、おもむろに口を開いた。
「…慶兄と付き合うのか?」
「……あ…えっと…、」
しまった。忘れてた。
「…まだ…分かんない」
「そうか~」
ぼんやりとし過ぎて、すっかり頭から飛んでしまっていた。
「好きなのか?」
「好き…?う~…ん」
よく分かんない。本当に分かんない。