「何か四人兄弟とか…恥ずかしいと言うか…なあ」
「仲良しなんじゃん?…お父さんとお母さん」
そっかあ~、そうなんだ。高校から一緒だったのに、家の事詳しく話さなかったのは、恥ずかしかったから?なのかな。
「お姉さんいくつ?弟くんも」
「姉貴は俺らの5つ上の25だな。弟は……、」
当然続くと思っていた言葉が途切れ、どうしたんだろうと瑠衣斗を見上げた。
「……るぅ…?」
心臓がドキリとした。
見上げた瑠衣斗は、無表情にどこか遠くを見るようだった。
とても悲しそうな目をして、軽く唇を噛み締めているようだ。
こんな瑠衣斗の表情は、初めて見た。
「弟は俺らの2個下」
瑠衣斗から目が離せなくて、薄く開いた唇が、自然とふっと緩んだ。
「るぅ…どうしたの?」
自然と口を開いていた。
口に出さずにはいられなかった。
「え?」
少し目を見開いて私を見る瑠衣斗は、いつもの瑠衣斗だった。
きっと…何かあるのだろう。
何となく聞き出す事ができず、曖昧に「何でもない」と返事を濁した。
この時の瑠衣斗の悲しそうな表情の理由が、後々、私の心を大きく変化させる事になるとは、私にはまだ知るよしもなかった。