お花畑のような広場を抜けると、海岸へ続くコンクリートの階段があった。
すこし高くなっているこの場所から見える景色は、やっぱりどこまでも続く広い海だった。
少し傾斜のキツい階段を、慶兄は鮮やかに降りてしまうと、下から私を見上げて手を差し出した。
「おいで」
優しい微笑と動作に、心臓がドキリとした。
そっと手を伸ばすと、手を握られて引っ張られてしまった。
「ひゃあああ」
バランスを崩した私は、慶兄に飛び込む形になっていた。
「はは、本当に軽すぎだな」
慶兄の声が耳元から聞こえてきて、胸に慶兄の低い声が響いてくる。
私は、慶兄に抱き止められていた。
「もお~!!ビックリしたじゃん!!」
じたばた暴れると、慶兄は笑いながら優しく地面に下ろしてくれた。
心臓がドキドキ言ってうるさい。酸素が薄いような気がした。
ガッシリとした慶兄の力強い腕や、広い肩の感触が体に残っている。
軽々と抱き止め、下ろしてくれた腕に、男の人の力強さを感じて、急に恥ずかしくなってきた。
「行こうか。転けるなよ」
「大丈夫だもん」
そう言って歩き出した慶兄は、私と歩幅を合わせるように、ゆっくりと歩いてくれる。
手は繋いでいない。
でも、私の心臓が落ち着く事はなかった。