突然向けられた視線に、ドギマギしながら慶兄の言葉を待った。
「行くだろ?俺も休み取るよ」
「え?う、うん」
断る理由もないし、断っても連れて行かれてしまうだろうし。
ハラハラと舞う桜の花びらが、淡いピンクの雪のようだ。
柔らかく笑う慶兄は、私の頭を撫でながら優しく口を開いた。
「ストレス発散しに来いよ。リハビリだ」
「リハビリ…?」
おうむ返しに返事を返すと、ニッコリ微笑まれた。
「少し歩こうか」
「へ?」
立ち上がった慶兄に、私の手を取って立たせられた。
そのまま立ち上がり、慌てて脱いでいたスニーカーを履き込んだ。
「おい~!!いちゃつくなよ~」
龍雅がそんな事を言うので、慌てて振り返って睨み付けた。
ちょっとやめてよ!!
顔が熱いのが分かる。きっと赤くなってるから迫力なんてないだろう。
「ほどほどにするよ」
……慶兄何言ってるですか。
一見爽やかに笑って言ったが、かなりのドッキリ発言だ。
そう言って、慶兄に手を繋がれたまま歩き出した。
「…慶兄が壊れた」
背後から、驚いたような龍雅の声がした。