何時間でも眺めていられるような景色に、本当に時間が止まってしまったようだった。


美春は私の手を握ったまま、大人しく景色を眺めていた。



「いでえ!!慶兄土足で蹴るなよ!!」


「素足ならいいのか」


「ぎゃはははは!!るぅ、ケツに足形付いてるぞ!!ぎゃはははは!!」


下品な笑い声と共に、騒がしい集団が荷物を抱え、ここから見て左手にある駐車場の、桜の木の間から登場した。



…雰囲気台無しだよ。


美春が立ち上がり、両手を口元に当てた。


「俊ちゃ~ん!!早く早く~!!」

美春がそう叫ぶと、荷物を抱えた俊ちゃんが、歩きながら手を振った。


途端に待ちきれないと言うように、

「手伝ってくる~!!」


と走って行ってしまった。





少し離れた所には、多分友達や親戚同士で来たのであろう、家族連れが数組一緒にいる。


幼稚園児ぐらいの子供が五人いて、一生懸命に舞い落ちてくる桜の花びらを取ろうとしていた。

そんな子供達を、大人はにこやかに温かく見守っている。



他の先客は、私達以外家族連れだった。



楽しそうな様子に、思わず見つめてしまっていた。





私の両親は、あんな風に私を見守っていてくれてたのかな…。


胸がギュッと締め付けられたようだった。