「俺はシャルロット…君が好きだ」
その言葉に反応して私は勢いよく上を向く。
エヴァンの瞳はあの時の夜と同じで、とても真剣な眼差しで…金色の瞳に吸い込まれそうだった。
「本当に…?」
私はすがるように彼の胸に手を当てる。
「ああ、本当だ」
そう言ってエヴァンは私を優しく包み込むように抱き寄せた。
そして私たちはしばらくの間、黙ってそのままでいた。
まるでお互いを確かめ合うかのように…。
「(私ってどうかしてる…。急に取り乱したりして…。パーティーの時はエヴァンにされるがままだったし…)」
夜の雰囲気がそうさせるのか、それとも彼の魅力に魅入られて私がおかしくなっているのか分からなかった。
「…随分と大人しくされるがままなんだな。このままだと俺が本当にシャルロットの婚約者ということで決まり…」
「あっ…!」
エヴァンの言葉に私は抱きしめられた状態から少し距離をとって彼から解放される。
危ない…また彼の調子に乗るところだった。
「ま、まだ決まってないわよ!」
「へぇ…ジョシュアにも俺に対する気持ちと同じものがあるんだな?」
そう言ってエヴァンはニヤリと笑みを浮かべる。
「そ、そうよ!ジョシュアは優しくていろんな話をしてくれるし、まるで…」
まるで…その後の言葉が出てこなかった。
私はジョシュアのことも好きなはずなのに…。
「…まるで、何?」
「な、何でもないわ!とりあえずあなたとジョシュア…どっちって決まってないからね!」
「ふーん…」
このままだとまた何かからかわれると思い、私は借りていた上着を強引にエヴァンに押し付ける。
「そろそろ戻りましょう。…あと、付き合ってくれてありがとう」
「いいえ、楽しかったですよ、皇女様」
「…っ」
私は火照った顔を見られたくなくて、エヴァンの前を早歩きで歩いた。
願わくば早くこの火照りと心臓の音が収まりますようにと思いながら…。