君の詩が聴こえる(仮)

目が覚めると、私は、リビングのソファに横になっていた。

昨夜、割れたガラスの破片を片付けた後、お母さんが泣き止むまで一緒にいたんだっけ…

「そのまま寝ちゃったんだ、、、」

お母さんが掛けてくれたのであろう毛布を両手でぎゅっと握った。

「あったかい」

久々に感じた温かさに涙が溢れそうになったが、毛布を頭までかぶり、少しの間、涙をこらえた。

『泣いちゃだめだ、笑顔でいるんだぞ』

お父さんが私に言ってくれた言葉を思い出す。

-私が泣いたら、お母さんが悲しむ。だから、泣いちゃいけないんだ..

我慢しようとすればする程溢れてくる涙は、毛布をジワジワと濡らしていった。

どれくらい泣いただろうか、、、
少し落ち着いたところで、毛布から出る。

部屋は、暖房がついていて、少し暑かった。

時計を見ると朝の6時だった。

ソファから立ち上がり軽く伸びをすると、少しスッキリした。

今日は、月曜日。

私は、学校へ行く準備を始めた。




私、志葉 弥生 シバヤヨイは、地元の公立高に通う高校1年生。

特にこれといった特徴のない、ごくごく普通の高校生。

「しばぁ〜!おっはよ」

教室に入った途端、鼓膜が破れそうな程の大声で盛大に迎えてくれたのは、近野 智香 コンノ チカ

入学式で席が隣で、その勢いで仲良くなったのだ

「おはよ」

私は、自分の席に着きながら挨拶を返す

「相変わらず可愛いね〜しばちゃんは」

「ありがとう、そんなに毎日褒めても何も出てこないよ」

「しばちゃんが照れてるの見れるだけで十分!」

「そうですか…」

カバンから教科書を出しながら他愛のない話をする。
それだけで、幸せだと思えた

「あれ?弥生、昨日泣いたの?目が腫れてる」

「...っ、、、泣いてないよ?多分、寝不足じゃないかな」
「ふぅん。まぁならいいけど。なんかあったら言ってね?しばちゃんを泣かせるやつがいたら私が捻り潰すから!」

-ありがとう

心の中でそうつぶやくと、智香の優しさにまた涙が溢れてきそうで、、、

「智香のバカ」

「なんでよwバカじゃないし!」

「ごめんってwなんでもないw」

-智香ごめんね、、素直になれなくて

チャイムが鳴り、教室に先生が入ってきた。

「後でね、しばちゃん」

そう言って智香は自分の席に戻って行った。

「今日からこのクラスに新しいメンバーが加わることになった。」

担任の言葉に教室が騒がしくなった。

智香も何か言いたげな顔でこっちを見ている。

「先生!早く転校生、紹介してくださいよ!」

男子生徒が野次をとばすと、周りもそーだそーだと声をあげた。

「わかったわかったから。静かにしろ。
転校生、入っていいぞ」

カラカラと静かに扉が空いた。その一瞬で教室が静まり返った。

入ってきたのは、男子だった

「キャーッ、超イケメン!!」
1部の女子の奇声と同時に、男子のため息が混ざっていた。

智香の方に目をやると、想像してた通りの目で転校生を見つめていた。

「はいはい、みんな静かに。じゃあ、転校生自己紹介してください」

「初めまして、天音奏斗です。よろしく」

再び女子の奇声と男子のため息が教室中に響いた。


私の人生が彼によって大きく変えられるとはこの時は思いもしなかった。


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