「噂?」


「そうです。例えば、放課後残っていた生徒がエレベーターが動くのを見たとか、スイッチが光るのを見たとか」


「あぁ、そういう怖い噂なら知ってるよ?」


当たり前のようにそう言った真紀恵先輩に幸生が更に食いついた。


「たとえば、どんな話があるんですか?」


質問しながら生徒手帳を取り出してメモを取り始めた。


まるでオカルト雑誌の取材をしているような雰囲気だ。


「それこそ、今君が言ったような噂はよく聞くよ? 放課後1人で残っていたらエレベーターの扉が飛ぶ全開いて、引きずり込まれるとか」


真紀恵先輩は説明しながらクスクスと笑っている。


誰もそんな噂話信じていないのだろう。


聞いていてもありきたりで幼稚な噂話だとしか思えない。


しかし、幸生だけは真剣なまなざしで聞いていた。


真紀恵先輩にお礼を言って1年B組へ戻ってくる頃には、幸生はやけに真剣な表情になっていた。